Solar-C_EUVST

望遠鏡・装置

EUVSTは、太陽の幅広い温度帯を、同時に、隙間なく、高時間・高空間分解能で観測します。

01. 概要

図1 図1-2
図1:Solar-C_EUVST。口径28 cmの主鏡(軸外し放物面鏡単鏡)で太陽像を分光器部入り口のスリット面に結像し、スリットから取り込まれた太陽光は、回折格子で分散され、さらに検出器 (CCDおよび増感撮像センサーIAPS) でスペクトルが取得されます。主鏡の角度を制御することでスリット面の太陽像を動かし、太陽の2次元情報を取得します。©︎ JAXA/国立天文台

Solar-C_EUVSTは、望遠鏡の開発を国立天文台とJAXA宇宙科学研究所を主体とした日本のチームが、分光器の開発を米国と欧州各国が担う、国際協力ミッションです。Solar-C_EUVSTの最大の特徴は、太陽から届く紫外線をなるべく多く集めるために、開口部フィルターを廃し、光学素子を主鏡と回折格子のみに抑える点にあります(図1、表1、表2)。このような工夫を行うことで、従来の10-30倍の有効面積を達成し、高空間分解(最高0.4秒角)、高時間分解(最短0.1秒)の分光観測を実現します。また、極端紫外域のさまざまな輝線をとらえることで、彩層(約1万度)からコロナ(約100万度)、さらにフレア(約1000万度)にわたる幅広い温度帯を隙間なく観測します。彩層からコロナ・フレア温度までを同時に0.4秒角で空間分解する分光観測は、世界で初めての試みです。さらに、分光データだけでなくスリットジョー撮像装置により画像データを同時に取得することで、スリットが太陽面上のどこに当たっているのか正確に把握し、太陽観測衛星や地上望遠鏡との同時観測がより詳細に行えるようになります。衛星姿勢による三軸制御および望遠鏡主鏡のティップティルト制御により、望遠鏡を常に高精度に太陽に指向します。

表1:衛星諸元
打ち上げ
時期 2025年中頃(第25太陽活動周期の極大期に相当)
ロケット JAXAイプシロンロケット
投入軌道 太陽同期極軌道(高度600 km以上)
運用期間 2年
衛星
重量 500 kg程度
長さ 約3.8 mの望遠鏡を衛星バス上に搭載
表2:望遠鏡諸元
望遠鏡
主鏡有効口径 28 cm
主鏡焦点距離 280 cm
分光装置 スリットジョー撮像装置
空間分解能 0.4秒角 0.4秒角
時間分解能 最高0.1秒 最高1秒
観測波長 17 - 21.5 nm(極端紫外)
46 - 128 nm(真空紫外)
連続光283.3 nm、
Mg I 285.2 nm、
Mg II 279.6 nm
波長分解能(λ/Δλ) 約5000(極端紫外)
約10,000(真空紫外線)
波長透過幅 0.2 nm
温度範囲 2万 - 1200万 K 5000 - 1万 K
視野 最大280×280秒角 最大300×300秒角

02. 空間分解能が従来の約7倍に

図2
©JAXA/国立天文台

Solar-C_EUVSTは0.4秒角の空間分解能を実現しますが、これは「ひので」衛星の極端紫外線撮像分光装置(EIS)の約2秒角と比べると7倍の向上です(従来の1ピクセルを約50ピクセルで分解)。これにより、コロナ加熱やフレア現象の本質的な理解に必須となる、物質・エネルギー輸送を担う磁力線構造や磁気リコネクション領域の詳細構造を分解して観測できるようになります。このことは、ぼやけた輪郭しか見えていなかったひまわりを、花びら状の構造や種まで正確に解像することで、生物学的な特徴を解明することに似ています。

03. 彩層・コロナ・フレアの幅広い温度帯を同時に隙間なく

図3
© NRL/LMSAL/JAXA/国立天文台

Solar-C_EUVSTは極端紫外線分光を行うことで、約1万度の彩層から100万度のコロナ、さらに1000万度に達する太陽フレアまで、幅広い温度を同時に、なおかつ隙間なく診断します。これにより物質やエネルギーの輸送を切れ目なく追跡することができるようになります。また、スリットジョー画像から、観測対象全体の空間構造を把握することができます。